協働ロボットの要件③

こんにちは、トロボです。

前回の記事で安衛則の詳細に立ち入ってみました。今回は安衛則を守らなかったら何が起こるのかを考えてみたいと思います(素人の法解釈であることを予めご了承願います)。

まず前提として、安衛則はあくまで運用規則ですので、それ自体は罰則を規定していません。安衛則が依拠する法律は労働安全衛生法(安衛法)であり、それに違反した時、同法に規定される罰則が適用されることになります。罰則の対象者は事業者(同法で「事業を行う者で、労働者を使用するもの」と定義)となります。機器を納めるメーカー等に対しては、同法の第三条の2に労働災害防止の努力義務が明記されているのみになり、特に罰則は規定されていません。

さて、産業用ロボットに関してですが、安衛則では、第百五十条第三~五号および第百五十一条において、教示、運転中の危険防止、検査、および点検の際に講じるべき措置について細かく規定されています。さらに、教示と検査に関しては、同規則第三十六条第三十一号・三十二号にて「特別教育を必要とする業務」として指定されています。この特別教育を怠った場合、こちらのレポートにもありますが、安衛法の第五十九条の3に違反することになり、同法第百十九条第一号の「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処されます。

では、産業用ロボットの運転中の危険防止の措置を怠った場合は、どのような罰則があるのでしょうか? これに関しては「事業者の講ずべき措置等」を規定した安衛法第二十条第一号(罰則としては第百十九条第一号)が適用されるようです。これは機械装置の危険一般を対象とする条文ですが、例えば、産業用ロボットに挟まれ作業員が死亡した事件や、その他多くの機械系の事故における処罰の根拠となっているようです。

上記の議論は、あくまで安衛則/安衛法に関するもので、実際に産業用ロボットが事故を起こした場合は、労働契約法における安全配慮義務を根拠とした民事訴訟・損害賠償にも繋がります。そのため、事業者(使用者)は、事故を起こさないよう安全に対して細心の注意を払う必要があります。ただ、初めて産業用ロボットを導入する事業者はロボットに関する知識が少ないため、SIerのほうから顧客に対し、装置の安全な使い方の指導をきっちりとすべきと考えます。あるSIerの話では、安全に関する設計や指導に関し、責任の所在を明確にするため、打ち合わせ内容を必ず議事録に残すとのことでした。

協働ロボットは、上述した法に抵触する確率がずっと高いため、安全対策がより厳しく問われることになります。その際、メーカー・SIerが各社各様の安全対策を行っていたのでは、リスクの見積もりや責任の所在が不明確になるので、厚労省が協働ロボットに対しISO適合を義務付けたものと考えます。

次回は、メーカーとして考慮すべき各種法律について考えてみたいと思います。

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